Twitterとかで書くと長文でウザがられるので(笑)自分のサイトなら大丈夫だと思い、ストレージエミュレータに
関するここで思ったことを吐き出しておきます。興味のある人だけ読み進めていってください
ご存じ、PC-9800シリーズは2003年10月の受注・生産終了から20年以上が過ぎました。また、界隈では
30~40年前のPC-9800シリーズを修理・メンテナンスしつつ今でも使い続けている人もいます(筆者もその1人です)
修理に際し、コンデンサなどの受動部品は現在でも代替品が手に入りますが、問題は基幹部品でありながら経年劣化で
故障・修理不可能な場合は事実上代替手段のない「専用」のフロッピードライブやハードディスクの存在
かつて「コンピューターはソフトが無ければただの箱」と言われましたが、現在では
「ソフトがあっても読み込み・保存ができなければただの箱」になりつつあります
PC-9800シリーズはよく数が出た機種のため、今でもフロッピードライブに関しては
動作不明でよければ
オークションや
フリーマーケットサイトなどで同じ型番のドライブがわりと入手できます
とはいえ、それに付随する「フロッピーディスク」がとっくの昔に生産終了しているため、代替品が(中古品しか)無い
という危機的状況は変わりません(特に5インチが深刻)
ハードディスクの分野は2000年代初頭に安くなってきたコンパクトフラッシュのTrueIDEモード+IDE変換アダプタを
用いた置き換えが流行りましたが、現在ではコンパクトフラッシュの衰退と小容量品がラインナップから消え大容量品
ばかりになり98で使いにくくなったこと(540MBや4.3GBの容量壁がある機種がほとんどなので)、トランセンドなど
現行で4GBのコンパクトフラッシュを取り扱っていても、TrueIDEモードなど本来の用途では使われなくなったモードが
ひそかに互換性を削減され、98で使えなくなった・動いてもおかしな挙動を起こす、ということが起こっています
(というより98の17セクタ8ヘッド固定パラメータがATA標準の63セクタ16ヘッドパラメータと軋轢を起こしてるともいう)
問題を起こしにくい「工業用」の代替ストレージもありますが、総じて高価で一般ユーザーには手を出しにくいです
IDE(NEC自身はIDEとは呼んでいませんが)インターフェースを持たないPC-9801BX/BA・PC-9821Ap/As/Ae以前の機種は
もっと悲惨で、IDEよりもっと前に衰退したNarrow 50pinのSCSI-HDDに頼らざるをえず、IDE-SCSI変換器も高価で
変換器を入れるとHDDスペースに収まらなかったり、CF変換だと相性問題に悩まされたりと色々あったようです
この辺の問題はPC-98に関わらず、国内ではコアなユーザー層が多いX68000シリーズ、海外ではMacintoshやAMIGAなど
ほぼ同じような問題を抱えていました
(”クラッシックカー”になぞらえて「クラシックPC」とか「レトロPC」とか「ビンテージPC」とか呼ばれてますね)
そんな流れが変わってきたのが、2010年代初頭に登場した?「HxC Floppy Emulator」の存在。PC-98で使えるかは
ともかく、フロッピーインターフェースを半導体メディアで置き換えるきっかけができました
この頃のハードディスクの半導体メディア化はまだ、コンパクトフラッシュのTrueIDEモードをSCSI変換するという
従来の方法から抜け出せない状態でした(CF Aztec Monsterなど)
ハードディスクの半導体メディア化が動き出したのは2010年代半ば、高性能なワンボードコンピュータ(と呼ぶのかな?)
Raspberry PIの登場や高性能なマイコンが登場したのをきっかけに、まるで登場タイミングを計ったかのように
クラシックPC研究会の「変換番長」、GIMONS氏開発の「RaSCSI」や海外でメインに活躍する「SCSI2SD」などが
相次いで登場しました(一番登場が早いのは変換番長なのかな?)
後はちょっと遅れてきてやってきたフロッピーエミュレータの「GOTEKとFDX68」、たんぼ氏開発/zato氏改良の
「ArdSCSino」および、それを海外のMacintoshやAMIGAなどにローカライズした?「BlueSCSI」など、フロッピーや
SCSIの代替手段の選択肢が現在ではたくさんできました(オープンソース・ハードウェアなのも良いですね)
で、肝心のIDE変換はというと?、IDEストレージ関係で困っているのは事実上PC-98シリーズユーザーのみ?なせいか
実験レベルでは海外でプロジェクトが動いているものの、まだまだ実用化には時間がかかりそうです
(PC/AT互換機は今更ISAやVLバスマザーなんて使わないし、可能ならPCIボードのストレージで代替できるからね)
IDEストレージの代替はまだしばらくコンパクトフラッシュ→IDE変換から変わらなさそう。容量制限(大きい方)や
相性問題などあれぞ、ある意味一番手軽で安価な半導体メディアへの代替手段だしね。先にATAPI光学ドライブを
半導体メディア化しそうな気がする、データ部分はともかくオーディオ部分の扱いがSCSIエミュでもいまだに
実現できていないんだよね、D/Aコンバータとかその辺の問題もあるのだろうけどさ
最近はCF-IDE変換に並行するかたちでDOM(Disk On Module)というIDEコネクタ直結型の半導体ストレージがありますが
直結型という構造が災いして、PC-9800シリーズのIDEインターフェース搭載機、特に2.5インチHDD採用機や486機では
物理的な問題や、接続ケーブル(コネクタ)が反転していてうまく接続・動作できないという問題が起こっているようです
また入手性がコンパクトフラッシュに比べて良くないのでさらに普及しづらく、PC-98で長期運用した際の相性問題など
未知の部分がまだまだ多いのが難点です(後年になって発覚したCFリセットなどの重大問題が発覚する可能性がある)
SCSI-IDE(CF or SATA)変換が過去の技術で廃れたか?と言われるとそうでもなく、SCSIエミュレータは
現在の技術やマイコンの性能では速度的にSCSI2(10MB/s)で頭打ちです
ただSCSI変換コントローラー自体がディスコンなのとFastSCSI2の性能を要求する用途があるかどうかですが)
その辺は専用変換コントローラーを使用するSCSI-IDE変換系は強くて、変換元ストレージが速ければ
FastSCSI-2規格目いっぱいの20MB/sまで余裕で出せます(UW-SCSIまで考慮すれば40MB~)
ただSCSI変換コントローラー自体がディスコンなのとFastSCSI2の性能を要求する用途があるかどうかですが
ま、CUIベースであまり速度を必要としない用途と、WindowsなどGUI使用を視野に入れた用途とは
完全にすみわけができているわけですな
で、レトロPCユーザーから見たら「大変に面白い」これら半導体ストレージエミュレータ群・・・
全然普及しねぇ
・・・というより、ユーザーの偏りがひどい?
使う人はめちゃくちゃ活用しまくってるが、それは「使う人」であって、広い目で見ると相変わらず
機械式のハードディスクとフロッピードライブで運用してるか、よくてCF-IDE変換どまり
ストレージエミュレータがレトロPCユーザーにあまり広がらない理由を推測すると、多分以下のような
感じだと思う
1:そもそも、今動いているから半導体化する必要性を感じていない
2:対応ハードの供給能力不足&価格
3:対応ハードがどこで手に入るかという周知不足
4:対応ハードを入手するまでの敷居が高い
5:物理的設置の問題
6:その機種に対応した接続(設定)情報の不足
7:接続(設定)情報があっても、情報が散っていてまとめられていない
8:メモリカードに入れるディスクイメージの作り方などの情報
1:そもそも、今動いているから半導体化する必要性を感じていない
「動いているからヨシ!」的なもの。レトロPC以外の事柄でも頻繁に起こる、後先の事を考えないとか
「今までのやり方を変えたくない」みたいな保守的な人はこの傾向
2:対応ハードの供給能力不足&価格
レトロPC界隈は全体的に見ると非常に小さい”パイ”なので、工業化は採算的に合わない=どうしても個人製作に
頼ることになる=個人製作なので数は作れないし、安定供給なんてもってのほか=個人製作ということは高価格
3:対応ハードがどこで手に入るかという周知不足
Amazonなどの大手ECサイトで手に入るのは一部のみ、あとは家電のケンちゃんとかBEEPさんとかBOOTHとか(国内)
4:対応ハードを入手するまでの敷居が高い
HxC Floppy EmulatorやSCSI2SDなどは海外調達前提なので、そこにたどり着いて先に行ける人は限られていると思う
GOTEKはAmazonで手に入るが「手に入る」と「使えるようにする」は別。国内で手に入るものに関しては上に準ず
5:物理的設置の問題
98のフロッピードライブは初期の機種を除いて一体型専用ベゼルがジャマして単純に置き換えとはいかない
ハードディスクも古い機種だと固定や接続に専用金具が必要だったり信号が専用だったり、そもそもハードディスクが
内蔵できない構造だったり(今更外付けもイヤでしょうに)、単純に置き換えというわけにはいかない
6:その機種に対応した接続(設定)情報の不足
7:接続(設定)情報があっても、情報が散っていてまとめられていない
8:メモリカードに入れるディスクイメージの作り方などの情報
まぁ1~5は前座でこれがメインじゃないでしょうか?
他のPCアーキテクチャは知りませんが、PC-98のフロッピーインターフェースでいえば
・フロッピーインターフェースのピン数が複数ある(26ピン・30ピン・34ピン・50ピン)
・PC-98特有の信号がある(VFO回路・3モード制御ピン・2DDの特殊仕様など)
・一部機種はフロッピーケーブルの信号が反転してる
これが機種ごとに違うっていうんだから、そりゃあ困りますよ
ハードディスクのほうも
・接続インターフェースが複数(ST-506・SASI・ESDI・SCSI・IDE)
・ハードディスクインターフェースやSCSIボードごとに容量制限やクセがある
PC-98の分野で一種の半導体メディアである「CF-IDE変換」がそれなりに普及したのは
・CF-IDE変換が比較的手に入りやすい(多くに流通網を持つ「変換名人」シリーズ様々ですね)
・コンパクトフラッシュメモリも上記換装が全盛期のころは比較的容易に手に入った
・導入が安価:変換器と4GB頃のCFを一緒に買っても1万円もいかないくらい
・同じことやってる人が多いので、接続トラブルが起こっても解決方法が見つかりやすい
・98IDEコネクタに接続したらハードディスクと同様、何も設定せずに使える←とても重要
やっぱり「6・7・8」ですよ!実際、HxCやGOTEKをPC-98で使う方法を紹介しているwebサイトはいくつか
ありますが「とりあえず使ってみたい」で接するには、なかなかハード(難しい的な意味)な内容が多いです
このWebサイトにできるのはその「ハードな内容」の敷居を少しでも下げて、ストレージエミュレータというものに
興味を持ってもらうことです。行きつく先に快適な操作環境があっても、その入り口に大きな壁が立ちはだかっていて
それを全部壊す・乗り越えていかないとたどり着けない、それができないから諦めて元の場所に戻るってのはもったい
なさすぎます
個人でやっているWebサイトなので、全てのストレージエミュレータの使い方をこと細かに説明していくのは
難しいですが、やんわりと時間をかけて(飽きて投げ出さない程度で)紹介していきたいと思います
長くて纏まっていない、勢いだけで書いた文章を
最後までお読みいただきありがとうございました